知ってたよ。
たとえ君がいなくたって、世界は変わらず朝を迎えることくらい。

でも、こんなにも寂しいんだ。
こんなにも苦しんだ。
おれの中だけは、いつまでも夜なんだよ。


ねぇ、君はどこにいるんだい?




〜どこかにいる君へ〜





君がいなくなって、もう随分たつのかな?
わからないや。ただ、がむしゃらに走ってきたから。

おれはね、イレギュラーハンターとして、平和を守ってるよ。
君が命をかけて守ろうとした、この地球を守ってるよ。

君が残したセイバーと一緒にね。


これがあると…、ちょっと安心するんだ。
君が、いつでもおれの傍にいてくれてるみたいで。
恥ずかしい話だけどね。



…でも、同時に実感するんだ。

…君がいないってことを…。



今でも思うよ。どうしてあの時、君を守れなかったんだろうって。
君に守られるだけで、おれは君を守ってあげられなかった。

いつも、君に守ってもらってばかりだった…。


罰なのかな? 君に甘えてばかりいたことの。
そう考えたりもしたよ。
一時期、おれは塞ぎこんでばかりだった…。


でも、おれを守ってくれた君の思いを無下になんかできないから。
君が守ってくれたこの地球に、ずっと平和が訪れてほしいから。

だから、おれはこの道を選ぶことができたんだ。


君がいなくても、平和を守れるように…って。



でも。
でもね。
どうしても、駄目になるときもあるんだ。



君に会いたいよ。
声が聞きたいよ。

目の前じゃなくていい。耳元でなくてもいい。
そんな贅沢言わないから。

たとえ通信機越しだって、夢の中でだっていいんだ。

おれの名前を呼んでよ。
いつもみたいに「エックス」って…!


ねぇ、知ってただろう?
一人残されるおれの気持ちを。

どうして、またおれを一人にするんだい…?



そう、心の中で叫んだこともあった。




実は今日、夢を見たんだ。君が出てくる夢を。

君はおれに呼びかけていた。
自分がいない今、誰が戦うんだ、って。
起きろエックス! って。

それで目覚めたら、巨大なメカニロイドが暴れているって聞かされて。
今から出撃さ。


…実は何だか、こうやって戦場に立っていれば、君に会えるような気がするんだ。
戦いは好きじゃないけど…、でもこれも、おれがこうしてハンターを続けている理由の一つかもしれない。


あぁ、そろそろ行かなきゃ。



忘れたりしてないよ。
あの時、コロニーを撃ち落とすために君がスペースシャトルに乗り込んだ時に、言ってくれただろう?

「必ず帰る」って。


信じてる。

君はいつか必ず帰ってくるんだって。
君とおれの運命は、必ず交わっているんだって。
たとえどれだけ離れても、再び会うことができるんだって。

君は死んでなんかいないんだって。


だから、行くよ。
君のセイバーと一緒に。




君はおれが太陽だって言ってくれたけど、おれの太陽は君なんだ。
おれには君が必要なんだ。
君がいなきゃ、おれは夜を抜け出すこともできない。

この寂しさから、この苦しさから救い出してくれるのは君だけだから。


この世界のどこかにいる君に会いに行くよ。
待ってるだけなんて、出来ないから。

君に触れて、君の名前を呼んで、君に言いたいことがあるから…。




「おかえり、ゼロ」




END




…ゼロックスです。ゼロックスのつもりです。
宇多田ヒカルの「Letters」という曲をイメージに。個人的X5〜6の間のゼロックス(エックス視点)曲の1つ。

桐屋かなる  2004.12.3
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