運命の悪戯 起動したオレを待っていたのは、限りなく退屈な日々だった。 何故か自分を製作した「誰か」は傍らには居らず、どういうわけか、そこはどこかの研究所などではなくハンターベースだった。 わけもわからぬままにいくつもの精密検査を受けさせられ、しかも何故か常に監視の元に置かれた。 何も変化もない日常。何の刺激もない世界。 オレはいつも心の底から『何か』を渇望していた。 それが、このつまらない世界を打破してくれるモノなのか、いつも感じる虚無感のような感覚を払拭してくれるモノなのかはわからなかったが。 しかしそのくせ、オレはずっと何にも興味を持てずにいたのだった。 オレの世界には何の彩りもなく、この視界には全てがモノトーンに映っていた。 頭に流れ込んでくる情報が、例え空を青だと伝えても、木の葉を緑だと伝えても、この視界には白と黒にしか見えていなかった。 やがてイレギュラーハンターになることが決まり、第17精鋭部隊へ配属された。 だが、新しい出来事は日常に変化を与えはしたものの、結局オレは瞬く間にまた退屈な日々に逆戻りしてしまうのだった。 幸か不幸か他の者よりも各段に高い戦闘能力を備えていた為に、イレギュラーハントですらオレにとっては刺激あるものにならなかったからだ。 しかしイレギュラーハンターである以上、ミッションを遂行するのは当然の義務。 オレはただ命じられるがままに任務をこなし、イレギュラーを屠り続けた。表情ひとつ変えず、冷静と言うよりもむしろ冷酷なまでにミッションを遂行した。 レプリロイドでありながら、まるで意志も感情も持たぬメカニロイドのように。 イレギュラーハンターになったことで得られたのは、"赤"だけだった。 そう、全てが白と黒だけで構成されていたこの世界で。 たった1つ、破壊されたイレギュラーが撒き散らす"オイル"だけが。 色を、帯びたのだ。 最初はこの変化に驚き、もしかしたらこの"赤"が自分を満たしてくれるかもしれない、と期待した。 "赤"を見ることによって、オレは確かに一種の高揚感を覚えたからだ。 だが、精神が昂ぶるだけで、何故か少しも満足はできなかった。 結局"赤"は、よりいっそう『何か』に渇望する心を増幅させただけだった。 膨れ上がり、埋まることのない空虚感。 それでも"赤"の飛び散る場所にしか身を委ねることができず、ただただ無意味につまらない毎日を過ごしていった。 しかし、そんな日常はある日突然破られる。 それは、目の覚めるような"青"だった。 "青"は、何も前触れもなく、いきなりオレの前に現れた。 ハンターベース内、第17精鋭部隊室。いつものようにドアを開けたその瞬間。 モノトーンの世界の中で、色鮮やかに主張する"青"を見つけたのだ。 刹那、まるで電撃をくらったかのようなショックを受けた。 それは背筋を伝わり、ざわりと神経が音をたて、一気に緊張がピークに達する。 衝撃。 そう、それはあの"赤"を知った時とは比べ物にならぬほどの衝撃だった。 自分でも説明のつかぬ、押さえられない衝動が突如膨れ上がり、体が勝手に動こうとする。 その視線の先で"青"がこちらを振り返った。 真っ直ぐな視線がオレを捉え、"青"が微笑む――。 ――駆け抜けたのは、揺るぎのない確信。 「彼だ」と。 オレを構成する全てのモノがそう語った。 「見つけた」と。 「彼なのだ」と。 この存在を、オレは切望していたのだ。 この存在こそが、オレの全てなのだ。 オレが造られたのは、この存在に会う為なのだ。 心から。本当に心から願った。 この"青"を、手に入れたいと…。 満たされると同時に、激しく掻き乱されるような感覚。 今までの退屈で彩りのない自分の世界が、音を立てて崩れていった。 "青"が、オレに新しい世界をもたらした。 それはまるで「自分」という存在が、この時初めて本当に起動したかのような感覚だった。 色をもった世界の中でもなお、何よりも鮮やかな"青"が歩み寄ってくる。 オレは初めて感じる、眩暈がするほどの感情の波に襲われながら、じっとそれを待った。 この存在とこれからの日々に、思いを馳せながら。 「初めまして。エックスです」 運命も宿命も、何ひとつ知らずに END X4で明かされた、ゼロの過去。あの後、ゼロはハンターベースで再起動したことになります。 でも「何も覚えていないゼロ」にとっては、それは再起動ではなくて初起動ということになるはず…。 …といった妄想から生まれた、エックスと出会う前のゼロ、そして2人の出会いです。 やはり“ゼロ”は、“エックス”という存在によって初めて、“本当に”起動したのではないかと…。 一見甘々のように見えて、実はシリアス…というかダーク路線まっしぐら? 私にも分からん(ぇ) 桐屋かなる 2005.1.16(2005.5.5 改訂) |
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